[ネット&セキュリティ] / 2006-03-13 (月) 12:03:00

有名ブロガー・松永英明氏が元オウム信者と告白 ミニまとめ

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ブログの世界には「アルファブロガー」という言葉があります。アルファブロガーとは優れた記事を書いて、他のブロガーに大きな影響を与える人のこと。
そのアルファブロガーの一人である「絵文録ことのは」の松永英明氏が、元オウム信者で過去にネットで大きな影響力を持っていた河上イチローと同一人物ではないか?という疑惑が起きています。
3月12日深夜に、松永英明氏は「備忘録ことのはインフォーマル」で、この疑惑が事実であると認めました。
ブログの世界を揺るがす大事件です。

超有名ブロガー・松永英明氏とは?

「絵文録ことのは」の松永英明氏は、本業はライターでありブログ啓蒙書をいくつも書いています。たとえば日本実業出版社の「ウェブログ超入門」、毎日コミュニケーションズの「はてなの本」、インプレスのムック「みんなのブログ(レギュラー執筆)」などの著書も多数あります。
出版の世界でも「ブログのことを書かせるなら松永氏がベスト」という評価が一般的です。

2003年にブログ「絵文録ことのは」をスタートさせて以来、松永英明氏は常にブログの言論界(?)をリードしてきました。ブロガーとしては眞鍋かをりさんや古田敦也さんが有名ですが、これらは有名人が書くからこそ人気を集めているブログ(もちろん内容も優れていますが)。

それに対して「絵文録ことのは」は、純粋に記事の内容だけでのしあがってきた有名ブログです。たとえばブログ検索サイト・テクノラティのランキングを見てみましょう。
テクノラティ・ブログトップ100
現在のランキングは14位ですが、上位のほとんどは有名人かニュース系・写真ものです。「きっこのブログ」を除けば、記事の内容で勝負するブログでは事実上のトップに位置しています。

松永英明 また記事をブックマークするサービス「はてなブックマーク」を見てみると、ほとんどの記事が人気エントリーに入っています。いかに他のブロガーに注目されているか、高い影響力があるかわかるでしょう。
ブログの第一人者となったために、各種セミナーやカンファレンスでも引っ張りだこでした。ブログ関連のセミナーとなると、松永氏がよく登場していましたし、あとで取上げますが民主党と自民党によるヒアリングにも参加しています。

元オウム信者(幹部?)との疑惑

ところがその松永氏について、3月上旬にある記事が写真週刊誌「FLASH」に登場しました。元公安調査庁の野田敬生氏が書いた「オウム信者が民主党前原代表に「宣伝戦略」を指南!」という記事です。
松永英明 この記事では、松永氏は元オウム信者で上佑氏の懐刀とも言われた某氏(松永氏本人の希望により伏せます)であり、当時インターネットで有名であった「河上イチロー」であると告発しています。

多くのブロガーはこの告発が嘘ではないかと疑いました。松永氏と河上イチローのキャラクターがあまりに違うこと。ブログの世界で信頼度の高い記事を書きつづけてきた人が、まさかオウムの元信者であるとは思えなかったからです。

しかしFLASHの告発記事は、本当だったのです。
3月12日深夜に、松永氏本人が自分のブログで「公表された通りで事実である」とコメントをしました。つまり元オウム信者であること、河上イチローであったことを本人が認めたのです。
単なる一ブロガーがオウム信者であるだけなら、何の問題もありません。しかしアルファブロガーとして高い影響力を持つ松永氏だったからこそ、多くファンやブロガーがショックを受けています(追記:コメントをもらいました。これ表現おかしいですな。「多くのファンやブロガーが」という表現は私の勝手な予断でした。ショックを受けているのは私だけかも。)。私もその一人です。


そもそも「河上イチロー」とは?

河上イチローは、90年代のインターネットで色々な意味で話題を集めていた人です。硬派の有名サイト「Der Angriff」で記事を書きまくり、酒鬼薔薇事件のリポートや告発物、政治関連の記事で注目されていました(詳しくは~ 河上イチロー極限資料集 ~)。
松永英明
またこの「Der Angriff」では、オウムの行動をリポートする「オウムウォッチャー」としての記事も多数ありました。妙に内情に詳しいオウムウォッチの記事が並ぶため、当時から内部か関係者により記事だろうと言われていたものです。

案の定、これを書いていた河上イチロー氏は現役のオウム信者(当時)で、自分のサイトでオウム信者であることを認めました。
オウムウォッチャーとしての記事では、オウムを批判しながらも、それに対立する弁護士やメディアを執拗に攻撃して、少しでもオウムへの圧力を逃そうとしたものです。ネットを使った謀略だったわけです。
その河上イチロー氏は、2000年を最後にネットの世界から消えます。その後、本名でのブログを開設したこともありましたが、大きな話題を集めることはありませんでした。


松永氏としての活動

その後、2003年に松永英明というペンネームでブログをスタートさせ、今のようなアルファブロガーとしての高い影響力を持つようになりました。
この件について松永氏本人は、自分のブログでこう書いています。
一連の疑惑について
・現在、私は団体に所属していません。そこから飛び出したという表現がしっくりくるかと思います。
・旧団体代表への信仰心は現在ありません。その状態で団体にとどまる意味はないと考えたのが、飛び出した動機でもあります。
(途中略)
・現在、私は純粋に自分の生計を立てるために働いています(少し趣味というか興味・志向もありますが)。これで稼いだお金は団体に流しません。
・2003年9月以降に始めたサイトの内容については、誰からも指示されたことはなく、すべて自分の経済的目的ならびに趣味を込めて作ったものです。それ以外の意図はありません。将来的に方向を転換するつもりもありません。
・また、ブログで報告している行動(イベントへの参加など)や、どういうところでどう働くかについても、すべて自分の意志で決定しています。事前・事後に指示はまったく受けていません。
すでにオウム(現アレフ)信者ではない、オウムや麻原への信仰心も一切ない、と言明しています。この松永氏の告白は真摯な態度で、信用できると思われます。

いくら問題のあったオウムと言えども、すでに団体を離れていますし、現アレフに対しても批判しています。また当時の事件についても「悪であった」と認めている以上、元信者であること=犯罪者とは言えません。だから建前上は、過去がどうあろうと、現在の松永氏の活動が優れていれば、咎めるべき点はないと言えるでしょう。

ショックを受けたブロガーの気持ち

しかしながら過去の河上イチロー氏がやってきたことを考えると、今回の弁明・告白についても疑わざるを得ません。
というのは、当時の河上イチロー氏は「オウムとは無関係の人を装いながら、オウムの記事を書き、それによって一種の世論誘導をしようとしていた」からです。その前科がある以上、今回の告白も「ほんまかいなー」と思ってしまうのは、仕方がないでしょう。

もう一つ気になるのは松永氏がクレバー過ぎることです。文章はわかりやすいし、論理もしっかり、視点も明確。河上イチローの時代からそうでしたが、この方は本当に頭がよく、かつ一般人向けの原稿をわかりやすく書きます。ブログの世界の文章力では、飛び抜けています。
だからこそ河上イチローというペンネームでのオウム記事が書けたんですし、松永英明というペンネームでのブログ論が高い評価を得ていました。ここまで頭がよくて文章の芸をお極めていると「今回のもアレフの謀略なんじゃないの?」と疑ってしまいます。

絵文録ことのはを読んでいた松永英明ファンは、相当ショックを受けているでしょう(追記:これも私の予断)。オウム信者であったこと、河上イチローであったことも問題ですが、それより「本当に信じられるのか?」「これも芸のうち?」なんて思ってしまうからです。残念ながら、今回のことによって松永英明というペンネームの信頼度は、かなり落ちてしまいそうです。

==追記
ただ今回の件については、疑惑が盛り上がる前に、松永氏本人がきちんと自分でコメントを出したことで大きな騒ぎにはなりませんでした。真摯な態度でブログで自分の立場を公表していますので、他のブロガーの間では一定の評価を得ています。
民主党ブロガー懇談会・アーレフ関与問題----勇気に敬意を表す(BigBang)
民主党ブロガー懇談会に一緒に出席されたBigBang氏。公表したことを評価。
イチネタ そういうことだったわけですね
極東ブログを書いていらっしゃるfinalvent氏。コメント欄で松永さんのとのやり取りあり。
==追記おしまい

ライター稼業として見るならば

私個人としての感想を言うなら「この人スゴイ」に尽きます。私もライターの端くれですが、とてもこんな鮮やかな仕事はできません。だって過去の経歴を一切なしにしてキャラクター(ペンネーム)を作り、それでブログの世界での第一人者になってしまんですから。河上イチローの引退時に宮崎学氏はこう書いています(~ 河上イチロー極限資料集 ~による)
「要するに、河上が元オウムの信者だったということで鬼のクビをとったように騒ぎたてて、本名を流すわ、あることないことかきまくるわで、ついに河上はサイトを閉鎖せざるをえなくなってしもたんや。」
本当に才能のあるヤツなのでこのままにしておくのはもったいない、と宮崎学氏は書いています。宮崎氏の言うとおりに才能のあるヤツだったわけで、だからこそ「ブログなら松永英明」とまで言われるほどの成功を収めました。

正直に言って、この才能には嫉妬します。こんな見事な手腕を発揮されるとグーの音も出ません。「絵文録ことのは」の人気にあやかろうと、私もトラックバックを打ったことがありますから。
ただ私は極端な宗教嫌いなので、オウム、アレフと聞いただけでもう関わりたくありません。多くの人がそう感じているのではないでしょうか。

民主党・自民党のヒアリングにも参加

ちなみに松永氏は、ブログで詳細に書いているように民主党のヒアリングに参加して、ネット世論のことをアドバイスしています。それが野田敬生氏の告発記事「オウム信者が民主党前原代表に「宣伝戦略」を指南!」につながるわけです。
松永英明
しかし自民党も同じことをやってしまいました。「絵文録ことのは」の記事にあるように、3月7日に自民党の「第3回 メルマガ/ブログ作者との懇談会」にも参加して、舛添要一議員や世耕弘成議員とも懇談しているのです(写真はは松永氏の「絵文録ことのは」に掲載されている自民党懇談会の様子)。


もし民主党のヒアリングだけに参加していれば、
永田メール事件に続く民主党のスキャンダルになっていたでしょうが、今回ばかりはセーフ。自民党も同じことをしていたからです。
たかがヒアリング・懇談会程度で、出席者の身元調査なんてするはずもありません。そんな身元調査をするのは全体主義国家だけ。逆説的ではありますが、今回の事件のおかげでまだ日本は本格的な全体主義国家にはなってない、ということがわかりました。だって元オウム信者が、与党の懇談会に出席できたわけですから。

さてこの問題、メディアはどうとりあげるんでしょうか。松永氏自身は取材を受けると自分のサイトで述べていますので、インタビューは可能かと思われます。