ソフトバンクS1グランプリとUstream


 今日行われた、ソフトバンクのS1グランプリの優勝戦「S-1グランドチャンピオン2010」の取材に行ってきました。日本テレビ系で放送されたように、優勝はNON STYLE。一昨年のM-1優勝に続き、見事1億円を獲得。その後のメディア向け囲み取材では、「何にも考えられなくて頭が真っ白。ビックリするばかりです」と、緊張気味の青白い顔で語っていました。

レポーターの「1億円で、これから飲みにいくんですか?」という質問に、「いやいや、これから吉本に戻ってネットラジオの仕事があるんです。それもギャラ1万5千円の仕事っす」と笑いを取っていました。フリートークに弱いってことを笑いのタネにしつつも、なかなか笑わせる囲み取材でした。

Ustreamの画質は最高。内容的には「テレビ的展開」

 で、この覚書のテーマは、Ustream。S-1グランプリでは、記者会見や敗者復活戦などで、Ustreamを使った公式放送が行われていました。出場者が全員揃った記者会見が、本格的なUsreamの初回だったと思いますが、この時はトラブルのせいで画質が最悪状態。昔のVHS3倍モード(古っ)みたいな画質で、同時中継していたケツダンポトフのそらのさんの画質のほうがずっとキレイでした。ソフトバンクの担当者さん・業者さんも、初めての試みにかなり苦労されていたようです。

 で、今回の本番のUstreamは、前回の反省をいかして、超高画質。16:9でビックリするほどきれいな画質で、本格的スイッチャーを使って、3画面分割などで放送していました。

 内容もしっかりしていて、女性タレントさんをメインに「裏方を見せる」というテーマで、スタジオ入り口の通路に陣取る体制。出てきた芸人さんにコメントを取って、かなり盛り上がった放送でした。表のテレビ放送があって、裏のUstreamがあるってのは、テレビの展開としては理想的なのかもしれません。

 芸人さんにも色んなタイプがいらっしゃいますが、「楽屋が最高に面白い芸人さん」ってのがいるわけで、それをUstreamがうまく捉えて、質のいい放送になっていたと思います。

視聴者300~1000人は、どうなのかな?

 ただちょっと気になる点が2つあります。1つは視聴者数。スタート時がおおむね300人程度で、このときはiPhoneの専用アプリが動いていない状態。iPhoneのS1アプリによって、Ustreamが見られるはずだったのですが、初期にトラブって止まり、その後もWi-Fiだけしか見れないアプリだったため、あまり伸びていなかったようです。twitterの書き込みによれば、最大でも1000人程度だったようです。

 1000人は、現時点のUstreamにしては多い人数ですが、ゴールデンタイムの生番組の裏を見せるという秀逸なコンテンツにしては、やっぱり少ない感じがします。一般ユーザーにとって、Ustreamはまだ縁遠いこと。そしてお笑いのファンが携帯電話基本の年代ということもあって、今ひとつ伸びていません。

 今現在で、Ustreamの人気番組といえば、宇川直宏氏主宰のストリーミングスタジオ「DOMMUNE」でしょう。DJ、トーク、セッションなどを毎晩放送するコンテンツはUstreamナンバーワンの人気で、平均して4000~5000人程度のリアルタイム視聴者がいます(たぶん世界でも有数のUstream放送)。ライブストリーミングに徹したDOMMUNEと、テレビベースのS-1を比較するのは酷(S-1にとって酷)ですが、それにしても人数的には今ひとつだと思います。

 もっとテレビ番組なりメディア宣伝から、Ustreamへ引っ張ってくるべきかなと思います。Ustreamを知らない層を引き連れる感覚でアピールし、それをソフトバンク自体のPRにつなげていく方向が必要だと考えます。

視聴者コメントでの一体感作りが結構難しい

 もう一つ気になったのは、視聴者コメントの扱い方です。やはり作りがテレビ的である以上、コメントを拾っていくというスタイルが今ひとつ反映されていないイメージ。いやS-1ではかなりがんばっていたのですが、やはり司会者次第なんですね。司会者にスタッフが上手にコメントを伝えて、すぐに内容に反映させていくのが手腕の見せ所。とは言っても、かなり難しいことですから、そこまで要求するのは酷かな。テレビ番組的な作りをベースにしている割には、よくがんばっていたと思います。

 視聴者コメントには、もう一つの大きな効果があります。それは視聴者同士の一体感を作ること。「すげー」「テレビより面白い」なんてコメントが出ることで、番組とは関係のない世界で、視聴者が一体感を感じるのです。こうなると視聴者は、ずっと見続けるんですね。多少番組がグダグダになっても、視聴者同士のチャットで成り立ってしまう。ことによると、番組とはまったく別の方向に進んでしまうこともあります。で、うまい司会者は、これを番組の内容に反映させちゃうわけです。ニコニコ動画では、こんな展開がよくあります。

 ところがUstreamは、これが難しかったりします。Ustream自体のチャット、ハッシュタグでの会話があるわけですが、どうも分散してしまう。そしてハッシュタグでの会話も、若干タイムラグがあるので、盛り上がるのが難しい感触です。iPhoneのUstremビューアーは結構良くできていて、その一体感を作りやすいのですが、やはりiPhoneユーザーに限られる感じがします(ごめんなさい、この辺、かなり適当かも知れませんw)

 S-1ほどの大きな仕掛けとなると、Ustremの扱いは本当に難しいところです。裏を見せればいいのか、ネットの先端を走るユーザーをとりこむのがいいのか、それともテレビ的な展開がいいのか、悩ましいところかもしれません。

 ただ、今回のチャレンジはお見事です。2時間をきっちりUstremで流して、ゴールデンのテレビ番組との連携もできていたわけですから。細かいことをうじゃうじゃ言いましたが、仕掛けとしては成功と言っていいと思います。テレビよりずっと面白い局面がかなりありましたし。

 ぶっちゃけ、Ustremはテレビとは相容れないメディアだと思っています。UstreamナンバーワンのDOMMUNEを見ると感じるのは「あー、これは絶対に放送メディアでは作れないコンテンツだな」ということ。時間的にも、演出的にも、DOMMUNEにはかないません。テレビと同じコンテンツ・同じ作りにしてもダメなんですね。その中でも、今回のS-1はかなりがんばったと思います。今後の展開にも期待します。

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ITジャーナリスト・三上洋



セキュリティ、携帯電話・スマートフォン、携帯電話料金、ライブメディアのライター・ジャーナリスト。文教大学情報学部非常勤講師
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