ドコモiPhone5s・5c発売決定:何が起きるか?販売の混乱と国内メーカーの苦境


ドコモiPhone5sがいよいよ登場。9/12午前2時、Appleの発表会において、NTTドコモからのiPhone5s・5cの発売が確定しました。これにより、どんなことが起きるのか予想してみましょう(2013年9月12日午前4時35分更新)

なおNTTドコモでは、一部会員に向けて先行予約を行います。詳細については以下の記事をどうぞ



ハイスペックのドコモiPhone5s(A7チップ、3色展開)、廉価版のドコモiPhone5c(A6チップ、5色展開)を9/20発売

ドコモiPhone5S5C発売

engadgetによるApple発表ライブブログ http://www.engadget.com/2013/09/10/apple-iphone-liveblog-2013/


2013年9月12日、日本時間2時のAppleの発表会で、NTTドコモからiPhone5c・5sのどちらも発売されることが決まりました。
発売日は9月20日金曜日。いよいよです。
ドコモiPhone5S
前回の記事「朝日・日経が報道「ドコモiPhone発売」で起きる3つの重要ポイント」でも取り上げましたが、改めてNTTドコモによるiPhone発売で起きる余波について、予想してみます。

1:数百万台レベルの販売?かなりの混乱が予想される

NTTドコモのユーザーは6000万人オーバー。ある調査によれば半分以上がiPhoneを買いたいとの答えもあります。
そこまでオーバーではないにしても、仮に5%がiPhoneを買うとしたら300万台にもなります。こんなに大量の契約をNTTドコモは一気にさばけるでしょうか。正直に言って、かなり難しいでしょう。
ソフトバンク・auが初めてiPhoneを扱った時も、大きく混乱しました。今回も販売時のトラブル(システム、契約条項など)でかなり混乱が起きることが予想されます。

販売が混乱する理由は、今までのドコモとは異なる販売体制

販売が混乱すると予想される理由は2つあります。

Appleでの販売:ドコモショップを通さない販売

ドコモショップを通さず、Apple販売店でのiPhone販売。NTTドコモにとっては未体験のことです。契約受付のシステムを作るだけでも大変で、20日に間に合うのかどうかすらわかりません。

契約時の抱き合わせが不可能に

また今までのように、契約時の各種サービスの抱合せ(補償サービス、BeeTVなどの付加サービス、健康・クルマ関連の有料サービス)ができません。そのため既存のドコモショップでは儲けが非常に薄いはずで、そこも問題になるでしょう。ドコモショップでもトラブルが起きそうです。

SPモード、各種サービスの遅れはやむなしか?

そして、ドコモだけで使えるサービスが、果たしてiPhoneですぐに使えるのか、大きな課題です。たとえばiモードメール=spモードメール、留守番電話などのネットワークサービスが対応できるかどうか。iOS用のアプリでの対応になると思われますが、そのアプリが間に合うかどうかです。
ソフトバンク・auの場合も、iPhoneでの対応は大幅に遅れました。またNTTドコモがAndroidを導入した際も、spモードのアプリの出来が悪く、大きなトラブルとなりました。NTTドコモでも数ヶ月は不安定な状況になることは間違いないでしょう。

2:冬モデル・国内スマホメーカーの苦境?

iPhone導入によって、NTTドコモ全体の戦略はどうなるのでしょうか?9月11日に、こんな記事が出ました。


ドコモは夏モデルでツートップ戦略をとり、成功しました。冬モデルではソニー、シャープ、富士通の3社のモデルを「スリートップ」として強く押すのではないか?との下馬評でしたが、これがナシになるかも?という報道です。
夏モデルのでツートップはよく売れたため、スリートップに入れば、相当な台数が売れることが予想でき、そのための準備をメーカーはしていたハズです。
しかしながら、iPhone発売によって、ドコモAndroidの「スリートップ」の売れ行きが落ちることは必至の状況。国内のスマホメーカーが苦戦することになりそうです。特に日本の市場、ドコモを頼りにしてきた富士通とシャープは、かなり苦しくなりそうです。

3:ソフトバンク・auの対抗策はユーザーに有利

今回のドコモiPhone発売により、有利になるのは、ソフトバンクとauのiPhoneユーザーです。というのは、ソフトバンクとauは、巨人・ドコモに対抗するために値下げやサービス拡充が必須となるため。
具体的には、以下の様な施策が出てくると考えています。

・端末サポートの拡充

毎月の料金から割り引く端末サポートを手厚くし、端末の実質価格を安くする。

・機種変更ユーザーへの優遇策、特にiPhone4S

ソフトバンクとauのiPhoneユーザーが、ドコモに逃げないように、機種変更ユーザーへの施策を拡充。具体的には端末サポートを厚くする、もしくは途中解約でも不利にならないように料金で返金するといった形が考えられます。iPhone4Sはちょうど2年で切り替え時期になりますから、ユーザーさんは注視しましょう。

4:シェアは?MNP流出は止まるが、ドコモへの流入は少ないと予想

ドコモがiPhoneを持つことで、MNP=番号ポータビリティでの他社流出は止まるでしょう。8月はドコモからのMNP流出が14万5千件もありましたが、iPhone発売によって流出は止まると思います。
しかしながら、ドコモが増えるかと言うと、そうでないと予想。理由は以下の通りです。

●ソフトバンクとauユーザーでiPhoneが欲しい人は、すでに持っている

ソフトバンクとauユーザーでiPhoneが欲しい人は、すでに入手済です。よほど繋がりにくい場所で使わない限り、現在のキャリアでiPhoneを使い続けるはず。iPhone→iPhoneの移行で、ドコモに戻るとは考えにくいからです。

●元ドコモユーザーでMNP移動した人の出戻りも期待薄

iPhoneが欲しくて、ソフトバンクやauにMNP移行したり、2台めを持っている人は、改めてドコモに戻るでしょうか?上記と同じ理由で、ドコモに戻る意味はほとんどなさそう。よって期待薄です。

「攻め」ではなく「守りの施策」だったドコモのiPhone導入

まとめます。
1:数百万台レベルの販売で混乱が予想される
2:ドコモ冬モデル・国内スマホメーカーは苦境に
3:ソフトバンク・auユーザーは恩恵がありそう
4:ドコモの流出は止まるが、シェア拡大は難しそう

このように、NTTドコモにとってiPhone導入は、攻めというより守りの施策と言えそうです。他社からユーザーを移行させるのは難しいことが理由の1つ。加えて、既存のAndroidユーザー、ガラケーユーザーが一気にiPhone移行することで、国内メーカーを苦境に陥らせる、ドコモの体制も混乱するという、諸刃の剣となります。
ドコモiPhone導入は、ユーザーにとって嬉しい事ですが、NTTドコモと国内スマホメーカーは、苦しい状況に立たされます。

なおNTTドコモでは、一部会員に向けて先行予約を行います。詳細については以下の記事をどうぞ



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ITジャーナリスト・三上洋



セキュリティ、携帯電話・スマートフォン、携帯電話料金、ライブメディアのライター・ジャーナリスト。文教大学情報学部非常勤講師
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