嵐の前の静けさ? MNPケータイ料金戦争前夜


料金で見る番号ポータビリティ

2006年10月24日の番号ポータビリティ開始に向けて、各社とも着々と準備を進めているようです。10月24日までに、NTTドコモ、au、ソフトバンク(ボーダフォン)から何らかの発表があるはずで、そこに新機種・サービス・料金の目玉が入ってきます。

宣伝合戦も力が入り始めした。もっとも挑発的なのはauのCM&Webサイト。仲間由紀恵が大きく手を広げた姿に「さあ、いらっしゃい」というコピー。うわーやるなあ、auさん。もろに番号ポータビリティでこっちにおいでよ、という挑発です。
この手の広告センスだと、auにはかないませんな。

番号ポータビリティ

ただしケータイ料金については、9月下旬現在はとっても静か。新機種やサービスについては、ずいぶんと情報が流れ、かつ発表も行われていますが、こと料金に関しては今のところ発表なし。嵐の前の静けさといった感触です。

マル秘中のマル秘。ケータイ料金の内幕?

ケータイの新機種やサービスについては、昔と違ってかなり事前の情報がつかめるようになってきました。新機種については意外なほど情報がオープンであり、発表前にわかることも珍しくありません。実際に発表前にWebサイトでも新機種情報が流れています。

ところが、ケータイ料金についてはそうではないのです。ケータイ料金の改定では、事前に情報が流れることはまずありません。キャリアの広報担当者すらも当日まで知らない状況で、いきなり新料金のリリースが飛んでくる、というパターンがほとんど。ケータイ料金では、発表会も行わずにリリース発表が多いのも、直前まで情報が流れないようにする手立ての一つなのかもしれません。

またケータイ料金に関する取材を申し込んでも、断られることがほとんど。料金についてはマル秘中のマル秘という扱いであるためで、インタビューに答えることも少ないようです。

後出しジャンケン。ポーカーゲームが始まる?

今までの例から言うと、1社が料金改定を発表すると、数日後には他のキャリアが同様の料金割引サービスを出してきます。無料通話のくりこしの時もそうでしたし、パケット定額でも同様でした。まさに後出しジャンケンの世界。ライバルが発表すれば、すぐに同様の割引・値下げをしてくる競争です。

特に今回の番号ポータビリティでは、他社のユーザーを奪う、または奪われる競争であるだけに、ケータイ料金の発表タイミングが難しいところ。
なぜ今が「嵐の前の静けさ」なのかと言えば、各社とも料金を大きく変える(と思われる)手玉を用意しながら、他社の動きを見ているからです。ポーカーの手札はできている、でもまだ見せる段階じゃないってことでしょう。

超個人的つぶやき。春まで待とう…

私はケータイ総合誌・ケータイBESTで、ずっとケータイ料金の原稿を書かせてもらっている(ありがとうございます)関係で、なぜか料金専門ライターみたいな感じになっちゃってます。たぶんここ1年半の仕事のうち3割以上は、ケータイ料金がらみの原稿でした。エクセルでシコシコと分析してグラフを作って…みたいな仕事をしていると、「これひっどいなー」とか「頭のいい人が料金を決めたなあ」なんてことを思うことが度々。

ユーザーにとっては月に数千円から1万円前後の話ですが、キャリアにとっては4桁の億が動くのがケータイ料金。企業の財務にも直接影響しますし、株価にも如実に現れます。本当にトップクラスの人間が、知恵を絞ってケータイ料金を設定しているのでしょう。

今回の番号ポータビリティでは、10月24日だけで決まるのではありません。10月24日はあくまでマラソンのスタートライン。アンケートの結果からも推定できますが、年末までにMNPを利用して移行する人はごく少数に留まるはずです。「鳴り物入りで始まった番号ポータビリティも、利用者は予想外に少数」なんて新聞記事が出るのが目に浮かびます。
10月24日までに発表されるケータイ料金は、料金戦争の第一段階。この後も競争によって、新たな割引サービスが投入されることになるはず。だから性急な番号ポータビリティでの移行はやめ、様子を見ることをお勧めします。

MNPでトクするのは移行する人ではなく、既存ユーザー

番号ポータビリティでトクをするのは、制度を利用して他社へ乗り換えるユーザーではなく、既存のユーザーだと考えています。


移行する人にとって、移行後に料金が上がってしまう場合がほとんどですし、他社へ移ってもサービス面に大きな違いはないのが正直なところ。
それに対して、移行しない既存のユーザーは、黙っているだけで料金は割引になるわ、新サービスは始まるわ、競争で新機種がどんどん出てくるわで、ありがたい話ばかり。番号ポータビリティのメリットを最大限享受するのは、移行しないで現在の会社を使い続けるユーザーなのかもしれません。

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ITジャーナリスト・三上洋



セキュリティ、携帯電話・スマートフォン、携帯電話料金、ライブメディアのライター・ジャーナリスト。文教大学情報学部非常勤講師
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