PLCはテーブルタップで大減衰~松下電工の高速電力線通信研究結果

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PLC・高速電力線通信をもっとも推進しているメーカー、松下電工では「松下電工技報」という研究レポートを季刊で出しています。11月に発行された「松下電工技報 Vol53 No.4」に「高速電力線通信における配電線の伝送特性解析モデル」という論文が載りました。ネット上で読むことができます(PDF)。
松下電工技報 Vol.53 No.4 特集:「解析評価技術」
高速電力線通信における配電線の伝送特性解析モデル[PDF]
PLC
この論文は、一般家庭での高速電力線通信での伝送特性を調べるもの。総務省の研究会では単純なモデルでしか検証されていませんでしたが、一歩踏み込んで6個のコンセントへの分岐、テーブルタップでのタコ足配線などの状況での伝送特性を調べています。

まず気になるのは「まえがき」。すみません勝手ですが引用させてください。
==引用==
高速PLC は既設の電力線を使用するため,新規の配線工事が不要であり,かつ電源プラグをコンセントに差し込むだけで接続でき,すぐに利用できる(プラグ&プレイ)というメリットがある。さらに無線LANなどのような電波を使用しないため,建物の壁面の反射による影響や,外部への情報漏洩などの問題もなく,家庭内の各部屋間でのホームネットワークの構築が容易である。
==引用終了==
もしもし?「電波を使用しないため」って何ですか、それ? 無線LANとは違うよと言いたいのでしょうが「電波を使用しない」ってのはひどい表現です。PLCは短波帯を使うもの。単にそれが電力線を通るだけで、実際には電波を使っての通信なんです。こんなことを書くようでは、短波帯への影響を考慮していないのでは?と思ってしまいます。

この論文では実際の一般家庭でテストを行っていますが、免許を受けて実験したという記述はどこにもありません。書いていないだけだとは思いますが、上記のような表現を見ると実験免許なしでやっちゃってるんじゃないの?と疑いたくなります。実験免許が出ている環境なら、決して「電波を使わない」とは書かないはずです。

2mのテーブルタップで大減衰

この論文はPLCの伝送特性を調べるもので、残念ながらラジオやアマチュア無線・電波天文などへの影響は取り上げていません。ただしPLCの実現を危ぶむような重要ポイントがあります。
PLC
PLC

それは複数の分岐で、PLCがどこまで使えるかという問題。論文では上の画像のように複数の分岐、つまりタコ足配線での接続したらどうなるか?を調べています。
それによると、タコ足のように分岐させて2mのテーブルタップを入れた状態では、分岐なしに比べて約25dBも減衰してしまっています。「25dB」もですよ!こんなに減衰するようではまともにスピードが出るとは思えません。論文でも
==引用==
一般家庭において,このような配線形態は,テレビジョン
などのAV機器の周辺や,パーソナルコンピュータ周辺の
コンセントで多くみられる。高速PLC のアプリケーショ
ンとしては,このような電気機器への搭載が想定されてお
り,複数接続による影響が懸念される。
…(中略)…      電気機器に付属する電源コード
程度のわずかな長さの分岐(計算例では2 m)のほうが,
配電線などの,より長い分岐に比べて伝送損失が大きくな
る可能性があることがわかった。同一のコンセントに複数
の電気機器が接続された状態では,さらに影響が大きくな
るため,高速PLC がそのような環境下で使用される場合
には,伝送損失の増加による伝送性能への影響を考慮して
おく必要がある。
==引用終了==
と書いています。2mのテーブルタップは、家庭でもっともよく使うもの。


それがPLCのスピードを大きく落としてしまうわけで、致命的な問題でしょう。タップなしで使うことは考えられませんから、「テレビに接続して映像配信」なんてサービスは難しそうです。
こんな致命的な問題が今ごろ出てくるところを見ると、メーカーでもちゃんとした実験をしてないのではないでしょうか? 仮にPLCが実現したとしても「遅すぎて使い物にならん!」という結果になる可能性があります。

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ITジャーナリスト・三上洋



セキュリティ、携帯電話・スマートフォン、携帯電話料金、ライブメディアのライター・ジャーナリスト
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