au MY割と3ヶ月くりこし 気になる料金動向


==2006年10月13日追記==
番号ポータビリティの手数料・解約料は下記の記事でまとめています。
最悪1万5千円超えも。番号ポータビリティ手数料+解約料まとめ
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auは新製品発表前に、携帯電話料金で新割引サービスを導入しました。1月17日に発表された「MY割」と「3ヶ月くりこし」です。明らかな番号ポータビリティ(MNP、ナンバーポータビリティー)への布石ですが、ちょっと疑問に感じる部分もあります。

3ヶ月くりこしはNTTドコモ対抗策

まずわかりやすい「3ヶ月くりこし」から。auでのくりこしは初となります。
・基本料金プランの無料通話の余りを3ヶ月まで繰り越せる
・ユーザーは従来までの家族割でのわけあい「家族分け合いコース」か、新しい「くりこしコース」のどちらかを選択する
・ガク割加入者は対象外
・WIN、CDMA 1Xどちらも適用可能
・提供開始は2006年8月1日から

これはごく単純で、NTTドコモの後追い策。NTTドコモは「2ヶ月くりこし」で、それでも余ったらファミリー割引加入者での分け合いが可能です(ちなみにボーダフォンは翌月へのくりこしのみ可能)。それに対してauは「3ヶ月」で「コースを選べる」と、NTTドコモよりもちょっといいですよ、という線に打ち出してきたわけです。
この2年ほどで、各社のケータイ料金は驚くほど似通ってきています。これはナンバーポータビリティでの競争のために、各社が同じ割引プランを追随導入するから。ライバルが入れた割引プランは、自社でも名前を変えて導入するということが繰り返されているのです。今回のau「3ヶ月くりこし」もそれで、2ヶ月と3ヶ月の違いはあるものの、まあ同じ線に立った、と考えていいでしょう。
ただし何度も繰り返し言っていますが、2ヶ月や3ヶ月も無料通話が余るのは、料金プラン選択が間違っている証拠。くりこしが発生した時点で、さっさと料金プランを下げたほうが得策です。
またガク割が対象外になったのはちょっと悲しいところ。ガク割は最新モデルのWINでは加入できないためユーザー数は少なくなっていますが、それでも学生にとってはありがたい割引サービス。くりこしの対象外になるのは残念です(auはどうもガク割を放置して消滅させたい意向があるような気がします…)。
細かいことを言えばもう一つ、2006年8月1日スタートってのが遅すぎて変です。8月スタートということは、3ヶ月くりこしになるのは2006年11月。あれ、これって番号ポータビリティ開始の月じゃないですか! 気にしすぎ?勘ぐり過ぎですかね?

一人モンでも最大半額「MY割」

次は新登場のau「MY割」を見てみます。「MY割」は一人でも、家族割+年割と同じ割引率になる割引サービス。今まで家族割加入者は大きく優遇され、家族割に加入できない独身の人(つまり一人モン)は高い料金を払ってきました。その一人モンでも割引率がアップしますよ、という嬉しい割引サービスです。
割引率は、家族割と年割の2つに加入した場合と同じです(いずれも基本料金プランに対する割引率)。
・WINでの「MY割」の割引率(2006年2月1日以降の家族割+年割と同じ)
au加入年数
1年目36.5% 2年目38.0% 3年目39.5% 4年目41.0% 5年目42.5%
6年目44.0% 7年目45.5% 8年目47.0% 9年め48.0% 10年目49.5%
11年目以降50.0%=基本料金がちょうど半額
・CDMA 1Xでの「MY割」の割引率(家族割+年割と同じ)
年割適用後の基本料金に対して25%の割引
(プランによって割引率は異なる)

一人モンでも家族割+年割と同じ割引率になるのですから、実にありがたいお話。ただし、落とし穴が一つあります。それは「加入期間の縛り」です。「MY割」を契約期間中にキャンセルすると、何と9,500円(税込9,975円)の契約解除料を払わなければなりません。しかも契約期間は2年。2年間のうち1か月だけは契約解除料ナシでキャンセルできますが、それ以外の1年11か月間でのキャンセルは、9,500円を払わなくてはいけないのです。
ああ、なんたること! これはボーダフォン「ハッピーボーナス」にそっくりです。契約解除料が1万円もかかるハッピーボーナスは、悪夢のような割引サービスであるとしてユーザーから総スカンを食らっています(2ちゃんねるのボーダフォーンスレッドを見てみるべし!)。これをauもやってしまったのです。
今までのau料金プランは、全体に見て良心的でした。年間契約割引サービスである「年割」の契約解除料も良心的でしたし、パケット定額プランを含めた料金も他社より安くなっていました。
しかしこの「MY割」では、過大な契約解除料を要求しています。明白すぎるほどのユーザー引き留め策で、番号ポータビリティのことを意識しすぎています。「安くするけど、その代わり辞めたらペナルティ取るよ」という姿勢があからさますぎます。

ユーザーの立場になって考えてみましょう。安くなるからと「MY割」に入ったとします。途中キャンセルは9,500円かかることは承知しているはず。それで契約期間2年が終了する前になったらどうしますか? 多くの人が
「ここなら辞められる。他社へ移るか、割引サービスを変えるかよく考えよう」
と思うはず。つまり過大なキャンセル料が、かえってユーザーの移行動機を高めてしまうのです。2年間でたった1ヶ月しか、無料でやめられる期間がないのですから当然のことです。ユーザー引き留め策のつもりで導入したのに、かえって移行を促してしまうことになりかねません。

いい割引なのに、契約解除料でイメージダウン

またauのイメージをそこなうことにもつながります。現時点では、あらゆるアンケート調査で「番号ポータビリティではauが有利」という結果が出ています。端末の多機能性、デザインのよさ、豊富なネットワークサービスなどで、他社より一歩先を進んでいます。それなのに、たかが割引サービスのキャンセル料だけで、イメージダウンするのはもったいない。
私は長いこと携帯電話の料金を見てきましたが、それでわかったのは「携帯電話の料金はイメージの問題だ」ということ。お金の問題ですから、数字でのきっちりした比較ができそうですが、実はそうではありません。携帯電話の料金はとても複雑で単純な比較ができないからです。そのため「ドコモは高いようだ」とか「パケット定額ならauがいい」とかいう、ユーザーの先入観、つまり「イメージ」で料金を考える人が多いのです。この「料金高低のイメージ」をいかに崩すかが、各社の料金戦略の基本となります。
NTTドコモはこの料金イメージにずっと苦しんできたため、必死になってCFを流し、新料金プラン・割引プランを導入して、ようやく「ドコモは高い」というイメージがなくなってきました。
auは「安い」というイメージがあるのに、また素晴らしい割引プランを導入したのに、こんな小さなことでミソを付けるのはなんとも残念です。

auユーザー向けに私のおすすめする選択をまとめておきましょう。
・「au命!」とauを半永久的に使い続けるつもりがあれば「MY割」に加入
・「MY割」より「家族割」を優先。離れた親戚でもいいので、がんばって「家族割」で加入できる人を見つけるべし
・家族割が無理なら、2年後に見直すことを前提に「MY割」へ加入
・移行のつもりがあるなら無理して「MY割」に加入しない
こんなところだと思います。他社へ移行するつもりがあれば、MY割は入らないほうがよいでしょう。
NTTドコモさん、ボーダフォンさんにお願いがあります。


MY割への対抗策として、単身者向けの割引プランを検討されているとは思いますが、どうぞ慎重にご検討を。契約解除料を高めに設定するのは、大きなイメージダウンです。契約解除料で引き留めるよりも、イメージダウンによる悪影響のほうが大きくなるでしょう。契約解除料はできるだけ安めにしてくださいませ。契約解除料ごときでユーザーを引き留めないで、もっと本質で勝負を!

●本サイトの参考記事
[解約料1] 移行前に注意!年間契約のキャンセル料
[解約料2] NTTドコモ「いちねん割引」の注意ポイント
[解約料3] au 年割とMY割の契約解除料

●参考サイト
KDDIプレスリリース
ひとりでも「家族割」+「年割」と同じ基本使用料割引となる「MY割」及び無料通話繰り越しの導入について〈別紙〉
ITmedia
KDDIは「3ヶ月くりこし」──3キャリア繰り越し競争
KDDI、一人でも“家族割”の「MY割」
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ITジャーナリスト・三上洋



セキュリティ、携帯電話・スマートフォン、携帯電話料金、ライブメディアのライター・ジャーナリスト。文教大学情報学部非常勤講師
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