ボーダフォン1.7兆円でソフトバンクへ身売り?日経が「大筋合意」と報道

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2006年3月17日に正式発表になったソフトバンクによるボーダフォン買収については、ソフトバンク2千億円で1.8兆円企業(ボーダフォン)を買収に書いています。
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追加記事をソフトバンクは2兆円も出せるのか? ボーダフォン買収にも書いています。
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ソフトバンクによるボーダフォン買収が「大筋合意」と日経が報道しています。
先に金曜夜にイギリス・ボーダフォンが「交渉中」とのリリースを出しましたが、3月4日土曜日に15時になって、日経新聞がお得意のスッパ抜き状態で「1.7兆円から2兆円で買収合意」と書いています。
ソフトバンク、ボーダフォン日本法人1.7-2兆円で全株取得へ

ソフトバンクは英ボーダフォンから、国内携帯電話3位のボーダフォン日本法人の全株式を取得する方向で大筋合意した。買収額は1兆7000億―2兆円の見込みで、日本企業による買収としては過去最大級となる。買収によりソフトバンクは固定電話から携帯電話まで手がける売上高約2兆5000億円の総合通信会社となり、通信第2位のKDDIに匹敵する企業規模となる。

 ソフトバンクは2月末までに英ボーダフォンに買収を提案、4日までに受け入れの回答を受けた。週明けにもデューデリジェンス(資産査定)を始め、買収額の最終交渉に入る。英ボーダフォンはボーダフォン日本法人の株式を約98%保有しており、保有分をすべてソフトバンクが買い取る方向。機関投資家などが保有する残り約2%は取得しない。3月末までの最終合意を目指す。

低迷ボーダフォンをソフトバンクが買収?

ソフトバンクがボーダフォンを買う、という話は、ソフトバンク携帯参入の初期から言われてきました。しかし日本のボーダフォンのほぼ全株を英ボーダフォンが握っている状態で、すでに「2兆円の投資をしている」とも言われています。ここまで金をかけちゃったんだから、引っ込みがつかないってのが英ボーダフォンの体勢でした。

しかし日本のボーダフォンは低迷が続いています。解約率はまだ高めですし、サービス面・機種の魅力・料金のいずれをとってもドコモとauにはかなわない状態です。ボーダフォンは回線レンタルで生き延びようとしていましが、それだけでは番号ポータビリティ以後を生き抜けないと考えているのかもしれません。

2兆円で買う価値はあるか?

ソフトバンクにとっては、ボーダフォンを買収するのがベストの選択です。全国に基地局を置くのはお金だけでなく、時間のかかる事業であり、2006年11月にはとても間に合いません。ボーダフォンを買ってしまえば、自社の携帯事業が立ち上がる前に番号ポータビリティ戦争に参入できるわけです。

問題となるのは買収金額でしょう。
ボーダフォンは、英Vodafoneが99.7%を買収してしまったため、2005年7月29日で日本の市場では上場廃止になっています。仮に2005年7月29日の時点の株価で計算してみます。
●上場廃止日:2005年7月29日のボーダフォン(株)の株価:24万9千円
●当時の発行済み株式数:542万7,946株
●当時の時価総額:1兆3,515億円
この時点でソフトバンクが50%の株式を取得するのであれば、7,800億円あれば買収できた計算ですが、今回の報道で日経は「1.7兆円から2兆円で大筋合意」と書いています。過半数の株式を買うのではなく、英Vodafoneが持つ株式を全部ソフトバンクが買う、という形です。

株式交換しか手がないのでは?

問題はソフトバンクが2兆円もの資金を作れるのかどうか。社債だけで2兆円もの資金を調達するのは不可能ですから、スクラップ&ビルドするなり、他の企業と相乗りするなり、なんらかの手当てが必要です。ここからが孫社長の腕の見せ所ですね。

すぐに2兆円を調達するのは無理。そうすると可能性としてあるのは「株式交換」が最有力です。ソフトバンクと英ボーダフォンが、お互いの株式を交換する形で、ボーダフォン日本法人の買収を計るという方法です。
週明けになってからでしょうが、ソフトバンクがその旨を発表するかもしれません。というか、もし株式交換で買収するなら、早く発表しなくてはなりません。株式市場の大きな影響を与えるためです。

これで機種メーカーを確保できる

ソフトバンクにとっては、ボーダフォンを買収するより、自前基地局を全国に設置したほうが安くつく可能性あります。MVNOで回線をレンタルすれば、7,800億円もの投資は必要ないでしょう。それでも買収しようとするのは、
●タイミングの問題(2006年11月の番号ポータビリティにいち早く参戦)
●新規顧客を獲得するためのマーケティング費用を抑える
●機種開発メーカーとの連携をスムーズに構築できる
という3点のメリットがあるからです。

実は最後の「機種開発メーカーとの連携」はとても重要なポイントです。日本のケータイ市場は、機種の魅力で決まることが多いため、いかに魅力のあるケータイ端末を出すかが重要。そのためには大手メーカーを味方に付けなければなりません。
しかしNEC、松下、ソニー、日立、東芝、シャープ、京セラといった大手メーカーは、すでに大手3キャリアに端末を供給しており、新規参入のソフトバンクとの提携は難しくなっています。もしソフトバンクがボーダフォンを買収すれば、シャープの端末(ボーダフォンへ供給されている)を確保できます。これは見逃せないポイントです。端末供給メーカーの確保、という点でもボーダフォンを買収する価値は十分にあるのです。

余談:オレの仕事大丈夫?

こっからは完全な余談です。筆者は雑誌ライターですが、ケータイ雑誌がベースです。端末のレビュー、業界の分析、そして料金の研究が専門。それで書いている雑誌の多くが、ソフトバンク系なのです。
ソフトバンクの出版部門は「ソフトバンク・クリエイティブ(旧パブリッシング)」という会社で、「ケータイBEST」「iモードStyle」「iモード情報サイト」などのケータイ専門雑誌を沢山出してきました。ソフトバンク・クリエイティブが、ケータイ雑誌ではナンバーワンであることは間違いないでしょう。ケータイ全般を扱っていますから、NTTドコモやau記事が中心になっています。

ところが、ソフトバンクがボーダフォンを買うとなると、変な立場に陥ります。ソフトバンクが最初からNTTドコモやauのライバルになるわけで、そんな立場で雑誌が作れるはずがありません。
ソフトバンクはとても不思議な会社で、今まではNTTドコモやauの記事をいくら書いても、何の問題もありませんでした。ケータイ業界を公平に見る雑誌をずっと作ってきましたから、別に親会社が携帯ビジネスに参入しても、問題なくドコモやauの記事を書いてこれたのです。
もしソフトバンクがボーダフォンを買収してしまうと、NTTドコモやauが取材を受けなくてなってしまうかもしれません。


ライバルのグループ会社に、情報を提供する会社なんてあり得ないでしょうから…。
ありゃりゃ、そうすると筆者の商売が怪しくなってきます…。困ったもんだなあ。

追記:追加記事をソフトバンクは2兆円も出せるのか? ボーダフォン買収にも書いています。

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ITジャーナリスト・三上洋



セキュリティ、携帯電話・スマートフォン、携帯電話料金、ライブメディアのライター・ジャーナリスト
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